楽しいこといっぱい

映画や本の感想書いていきます。アニメやゲームの話もします。

生きるとか、死ぬとか、父親とか/ジェーン・スー

初めてのブログ記事はスーさんのエッセイの感想で参ります。

もともとラジオやエッセイなどを耳にし目にして、なんとなーく察していたスーさんのご家庭の雰囲気。

家族思いの明るくハツラツとした魅力的なお母様と、自由だけどどこかほっとけなくてこれまた魅力的なお父様。これまで私はスーさんの会話の端々から垣間見えていたご両親について、大まかにこんなイメージを持っていました。そこにはお母様の早すぎる死とお父様との相当の確執があるのは知ってはいましたが、普段のスーさんのあっけらかんとした態度や明るくさばけた口調からそこまで重いものは感じていませんでした。

ですが、本書ではこれまで私たち読者(そして聴衆者)にあまり語られる事が無かったスーさんのご家庭の様子がつまびらかにされ、その姿は私の想像を軽く超えるほど大きなものでした。

「壮絶」という言葉でもなく、「過酷」という言葉にも当てはまらない家族の姿でした。

もし私がスーさんの立場にいたら、もっと自分の境遇を嘆いて悲劇として描いていたのかもしれません。肉親の看護、母親との死、父の背後に見え隠れするある人の存在、父親の事業の失敗、仕事での四苦八苦、思い出深い実家との別れ…。こんな出来事が立て続けに起きているならば、恐らく私以外にも悲劇仕立てにする人はいるのではないかなと想像に難くありません。

ですが、スーさんは本書で当時の状況に「なんなんだこれは!!」と叫びつつも(時にはお父様と喧嘩しつつも)決して悲劇にはせず、家族のエピソードとして描いていました。

これまでのスーさんの理知的な「大人のおねえさん」な語り口そのままに、あくまで淡々と。でも、決して冷たくは感じずにむしろアッサリとした語り口なぶん、スーさんの感情が見えてきてより暖かさが感じやすかったです。

特に心に響いたのは叔母さまとのエピソードが書かれた部分。

私もすっかりお洒落で好奇心旺盛で活発で素敵な叔母さまの大ファンになりました!

自分の不義理を責めるスーさんの姿に自分の姿を重ねて反省しました。私も祖母をもっと小まめに見舞わなくては…いや、見舞いに行きたい。

叔母さまとの最期の日々もじんわり響きました。小さな子供の姿にハッとするシーン、素晴らしすぎます。私が和歌の名人なら何か一句唄えるのに…。

お父様のエピソードはどれもこれも濃い!笑

特に心に残ったのは、お母さんのゆかりのお店を回った部分。お母様がそこにいないのは明らかなのに、手に取れるモノを媒介する事でお母様との絆をより確実にするだけでなく、親子三人の絆をも強まる事が出来た。そして初めてお父様がスーさんとお母様を結びつける役柄になったというオチも逸脱です。

家族って、難しいけど素敵だな。

そう思えた一冊でした。